富士スピードウェイを知るシリーズ。今回は、100Rを抜けた先に待っている「ADVAN」を紹介します。
正式には「ADVANコーナー」と呼ばれるこの場所ですが、ここではレーシングドライバーやモータースポーツファンの間でも馴染みのある「ADVAN」という呼び方で話を進めていきます。
前回紹介した100Rは、富士スピードウェイを代表する高速セクション。 そこを高い速度で駆け抜けたマシンが、次に向かうのがこのADVANです。
つまりADVANは、「高速から一気に減速し、再び加速へ切り替える」という、富士らしい大きな速度変化がある場所。 そして、このコーナーの走り方は、その先にある300R、さらにダンロップコーナーへも大きく影響していきます。
100Rでは、長い時間にわたって横Gを受けながらマシンを安定させる必要があります。
そして100Rの出口を抜けると、今度はADVANへ向けてブレーキング。 ここで、それまでとはまったく違う操作が始まります。
高速コーナーを走っていたマシンが、強いブレーキによって一気に速度を落とし、ヘアピン状のADVANへ向きを変えていく。
しかも、この区間は単純に「止まる」だけではありません。 100RからADVANへ向かう間は下り、その先では上っていくという、富士スピードウェイらしい高低差も存在します。
速度、荷重、路面の高低差。 さまざまな要素が一度にやってくるため、見た目以上に難しいポイントなのです。
ADVANを語るうえで外せないのが、やはりブレーキングです。
100Rを高速で抜けてきたマシンは、ADVANへ向けて強く減速します。
ここでは単純に「どれだけ強くブレーキを踏めるか」だけが重要なのではありません。 どのタイミングからブレーキを開始し、どこまで減速し、どのようにマシンの向きを変えるのか。
その一連の操作を、限られた時間の中で正確に行う必要があります。
ブレーキが早すぎれば、必要以上に速度を落としてしまう。 逆に遅すぎれば、コーナーへ入るための余裕がなくなってしまう。
さらにレースでは、前後に他のマシンがいることもあります。 そうなると、単純に自分だけの理想的なブレーキングをすることも難しくなります。
・100R出口からのブレーキングのタイミング
・強い減速の中でもマシンを安定させること
・ブレーキを残しすぎず、スムーズに向きを変えること
・コーナー出口に向けて早く加速できる姿勢を作ること
ここがADVANの面白いところです。
ブレーキングが重要だからといって、ただ強くブレーキを踏めば速いわけではありません。
ADVANで本当に重要なのは、「必要なだけ減速したあと、どれだけスムーズに加速へ移れるか」ということ。
ブレーキを強く踏みすぎてマシンの姿勢を崩してしまえば、その後の立ち上がりでロスが発生します。
反対に、コーナーへの進入から立ち上がりまでマシンをきれいにつなげることができれば、次の300Rへ向けてしっかり速度を乗せていくことができます。
つまりADVANは、
「減速する場所」でありながら、「次の加速を始める場所」でもある。
ここを理解すると、ADVANの重要性が一気に分かってきます。
ADVANを抜けると、その先には300Rが待っています。
ここで大切なのが、ADVANの出口です。
ADVANでどれだけ速く曲がれたかだけではなく、どれだけ良い姿勢で出口を迎えられたか。
それによって、その後の加速に差が生まれます。
ADVANから300Rへ向けては、マシンを加速させながら高速区間へ入っていきます。
そのため、ADVANの出口で余計な修正操作が残っていると、その影響がそのまま次の区間へ持ち越されてしまいます。
逆に、きれいに立ち上がることができれば、300Rへ向けて気持ちよくアクセルを開けていくことができます。
ADVAN単体のタイムではなく、その先まで含めて考える。
これが富士スピードウェイを攻略するうえで、とても重要な考え方です。
PCCJで使用されるポルシェ911 GT3 Cup。
このマシンでADVANへ進入すると、100Rまでとはまったく違う世界が始まります。
高速域で大きな横Gを受けていた状態から、強いブレーキング。 そこから一気にマシンの向きを変え、再びアクセルを踏んでいく。
ドライバーにとっては、身体への負荷も大きく、短い時間の中で非常に多くの判断が求められる場所です。
特にレース中は、前のマシンとの距離や後ろから来るマシンの位置も意識しなければなりません。
「自分が一番速く走る」だけではなく、「相手との位置関係を考えながら、どこで仕掛けるか」というレースの判断も重要になります。
ADVANのようなヘアピン形状のコーナーでは、マシン同士の速度差が大きくなります。
そのため、ブレーキングからコーナー進入にかけては、前のマシンとの距離を一気に詰めることもできます。
レースでは、こうした場所がオーバーテイクやポジション争いの舞台になることもあります。
ただし、マシン同士が近づけば、それだけリスクも増えます。
無理に飛び込めば、進入で行き場を失う。 相手と並んだままコーナーへ入れば、お互いのラインが制限される。
だからこそ、ADVANでは「どこまで攻めるか」だけではなく「どこで引くか」も重要になります。
これはタイムアタックではなく、レースだからこそ必要になる判断です。
そして、雨が降るとADVANの難しさは一段階上がります。
ブレーキングではタイヤのグリップが限られ、ドライコンディションと同じ感覚でブレーキを踏めるわけではありません。
さらに100RからADVANへ向かう区間では、それまで高速で走っていたマシンを一気に減速させる必要があります。
路面の状態を見ながら、ブレーキの強さやタイミングを調整する。
そしてコーナー出口では、濡れた路面でタイヤを空転させないようにアクセルを開けていく。
「止める技術」と「進ませる技術」の両方が必要になる。
それが雨のADVANです。
ADVANを見るときは、単純に「どのマシンが一番速く曲がったか」だけではなく、100Rからの流れを見てみてください。
高速で100Rを抜けてきたマシンが、どこからブレーキを踏むのか。
そこからどれだけスピードを落とし、どのようにADVANへ向きを変えるのか。
そして出口から300Rへ向けて、どのタイミングでアクセルを開けていくのか。
一連の流れを見ると、ドライバーによる微妙な違いが見えてきます。
100Rは「高速域でマシンを安定させる」コーナーでした。
そしてADVANは、そこから一気に減速し、マシンの向きを変えて再び加速する場所。
しかし、本当に重要なのはADVANだけではありません。
ADVANの出口から、300R、そしてその先のダンロップまで。
そこまでをひとつの流れとして考える必要があります。
だからこそ、ADVANで少し速く走れたとしても、出口で姿勢を崩してしまえば意味がありません。
逆に、進入から出口までを丁寧につなげることができれば、その先の高速区間で大きな差につながります。
富士スピードウェイは、ひとつひとつのコーナーが独立しているわけではありません。
「次のコーナーのために、今のコーナーをどう走るか。」
それが、このサーキットを攻略するうえで非常に大切な考え方なのです。
2027年のPCCJでは、新たな911 Cup Type 992.2が導入されます。
2026年までのマシンとは異なる新しいカップカーで、富士スピードウェイを走ることになります。
もちろん、マシンが変わればブレーキングやコーナー進入、アクセルを開けるタイミングなど、ドライバーが感じる部分にも変化が生まれます。
そして、これまでADVANを走ってきた経験が、新しいマシンでどのように活かされるのか。
そこも2027年のPCCJを見るうえで、楽しみなポイントのひとつです。
100Rから高速で進入し、強いブレーキング。
マシンの向きを変え、そして再びアクセルを踏んで300Rへ。
ADVANは、一見すると「ただのヘアピン」に見えるかもしれません。
しかし実際には、富士スピードウェイの中でも非常に多くの要素が詰まった重要なコーナーです。
100Rで作った速度を、どのように減速し、どのように次の速度へつなげるのか。
そこにADVANの面白さがあります。
そしてADVANを抜けた先に待っているのが、300R。
ここから再び、富士の高速区間へと入っていきます。
次回は、その「ADVANから一気に加速していく300R」を紹介します。
高速コーナーが続く富士スピードウェイで、300Rはどのような役割を持っているのか。
次回もぜひお楽しみに。