2026年のPorsche Carrera Cup Japan(PCCJ)は、すべてのレースを終えました。
しかし、2027年に向けた準備は、もう始まっています。
今年のPCCJは、第8戦の鈴鹿から最終戦の富士まで、非常に短い期間の中でレースが続きました。
そのため、ひとつひとつのサーキットやセクションについて、じっくり紹介する時間がなかなかありませんでした。
そこでTHE LOT.では、来シーズンに向けて少しずつ時間をかけながら、PCCJで実際に使用されるサーキットを「レーシングドライバーの視点」で掘り下げていきます。
今回から始まるのは、富士スピードウェイ。
そして最初に紹介するのは、富士を象徴する場所でもあるホームストレートです。
富士スピードウェイのホームストレートは、なんと1,475m。
約1.5kmもの直線が、最終コーナーを立ち上がったマシンの前に伸びています。
サーキットを知らない方が見ると、
「ただ真っ直ぐ走るだけなのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、レーシングドライバーにとってホームストレートは、決して「何も起きない場所」ではありません。
むしろ、富士では1周のタイムを大きく左右する重要なセクションです。
なぜなら、この1,475mの先には、富士スピードウェイ最大の勝負どころのひとつである1コーナーが待っているからです。
全長:4,563m
ホームストレート:約1,475m
コース幅:15~25m
特徴:最高速・スリップストリーム・ブレーキング勝負
ここが、富士のホームストレートを理解するうえで最も重要なポイントです。
ホームストレートそのものを速く走る。
実は、それだけではありません。
ホームストレートに入る直前の最終コーナーを、どう立ち上がるか。
ここが非常に重要になります。
最終コーナーからの立ち上がりで少しでも速度を失えば、その影響は1,475mもの長い直線の間ずっと残ります。
逆に、最終コーナーからきれいに加速できれば、そのわずかな差がストレートの終わりには大きな差になって現れます。
つまり、
「ホームストレートは、ホームストレートに入る前から始まっている」
ということです。
PCCJのカップカーに乗っているドライバーの視点で考えてみましょう。
ホームストレートに入った瞬間、ドライバーはアクセルを踏んでいるだけではありません。
ミラーで後ろを確認し、前方のマシンとの距離を見ながら、次の1コーナーまでの展開を考えています。
そして、レース中ならもうひとつ重要なものがあります。
スリップストリームです。
前を走るマシンの後ろにつくことで空気抵抗を減らし、長いストレートを利用して一気に距離を詰める。
そして、そのまま1コーナーでオーバーテイクを仕掛ける。
これが富士スピードウェイの大きな見どころのひとつです。
ホームストレートは、コーナーのようにステアリングを大きく切る必要はありません。
しかし、だからといってドライバーが休んでいるわけではありません。
むしろ、次の1コーナーに向けて多くのことを考えています。
前のマシンとの距離。
後ろのマシンとの距離。
スリップストリームに入るタイミング。
どちら側から仕掛けるのか。
そして、どこでブレーキを開始するのか。
ホームストレートの終わりには、これらすべてを判断する1コーナーのブレーキングが待っています。
ホームストレートでは「最高速だけ」を見ない。
最終コーナーの立ち上がりから、1コーナーのブレーキングまでをひとつの区間として考える。
ストレートで速いマシンではなく、次の1コーナーまでを速く走れるマシンを目指すことが重要です。
PCCJのようなワンメイクレースでは、基本的に全員が同じ仕様のカップカーを使用します。
そのため、ホームストレートではマシンそのものの性能差よりも、ドライバーの位置取りやスリップストリーム、そして前後のマシンとの距離が大きな意味を持ちます。
特にレースでは、1台のマシンだけを見ていればいいわけではありません。
前のマシンがスリップストリームを使って近づいてくる。
後ろからも別のマシンが迫ってくる。
その中で自分がどのラインを選ぶのか。
そして、1コーナーでどの位置に入るのか。
ホームストレートの最後は、すでに次のコーナーの「勝負」が始まっている場所なのです。
1,475mのストレートを走り切った先に待っているのが、1コーナー。
ここでは高速域から一気に減速します。
そのため、ドライバーはストレートを走りながら、1コーナーへ向けてブレーキングの準備をしています。
コース脇のブレーキボード。
前を走るマシンとの距離。
自分の速度。
タイヤの状態。
そして路面コンディション。
これらを瞬時に判断しながら、ブレーキを踏むポイントを決めていきます。
ほんの少しブレーキを遅らせれば、大きなアドバンテージになる。
しかし、遅らせすぎれば1コーナーで止まり切れない。
だからこそ、ホームストレートの終わりは「勇気」と「精度」が求められる場所でもあります。
2026年のPCCJ最終戦、富士スピードウェイは激しい雨に見舞われました。
今回の写真も、まさにそんなコンディションの富士です。
路面が濡れると、ホームストレートそのものが難しくなるというより、その先にある1コーナーへのアプローチが大きく変わります。
ブレーキングではタイヤのグリップが低下し、乾いた路面と同じ感覚で操作することはできません。
さらに、路面に水が残っていれば、マシンの挙動も大きく変化します。
長いストレートの先で待っているのは、非常に大きな減速。
だからこそ雨の富士では、「どこまで攻められるか」よりも「どこまで正確に止められるか」が重要になります。
雨のホームストレートでは、1コーナーのブレーキングを考えて早めに準備する。
乾いた路面と同じ感覚でブレーキを遅らせない。
マシンの挙動、路面、水量、タイヤの状態を総合的に判断する。
富士スピードウェイでPCCJを観戦するなら、ホームストレートではぜひ「ストレートの真ん中」だけではなく、最後の数百メートルに注目してみてください。
前のマシンの後ろにピタリとつく。
そこからスリップストリームを使って一気に近づく。
左右に並ぶ。
そして1コーナーへ向けて、ほぼ同時にブレーキング。
富士のレースでよく見られる、非常に迫力のあるシーンです。
同じマシンが並んで走るからこそ、ドライバー同士の判断や駆け引きがそのままレースの展開につながります。
01 最終コーナーの立ち上がり
ホームストレートの速さは、実はその直前から始まっています。 最終コーナーからどれだけきれいに加速できるかに注目です。
02 スリップストリーム
前のマシンの後ろにつき、長いストレートを利用して一気に差を詰める。 富士ならではのレース展開です。
03 ライン取り
オーバーテイクを狙うマシンがどちら側へ動くのか。 その動きによって、1コーナーへの進入位置も変わります。
04 1コーナーへのブレーキング
ホームストレートの本当のクライマックス。 高速域から一気に減速し、1コーナーへ飛び込んでいきます。
01 最終コーナーからの立ち上がり
02 ストレートでの加速
03 スリップストリーム
04 前後のマシンとの位置関係
05 1コーナーへのブレーキング
富士スピードウェイのホームストレートは、単純に「長い直線」ではありません。
最終コーナーからの立ち上がり。
ストレートでの加速。
スリップストリーム。
ライバルとの位置関係。
そして1コーナーへのブレーキング。
これらすべてがつながっています。
だからこそ、レーシングドライバーにとってホームストレートは、アクセルを踏み続けるだけの場所ではありません。
「次の1コーナーをどう攻略するか」を考えながら走る場所。
それが富士スピードウェイのホームストレートです。
2027年のPCCJでは、新型911カップ Type 992.2が導入されます。
今年まで走っていたType 992から新しい世代へ。
Kiyominにとっても、富士スピードウェイとの向き合い方がまた変わってくるはずです。
新しいマシンのブレーキ。
新しい空力。
新しいマシンの動き。
そして、ホームストレートから1コーナーへ向けてのブレーキング。
2026年に1年間カップカーを経験したKiyominが、今度は新型マシンでこの富士をどう攻略していくのか。
そんな視点で2027年のレースを見ると、今年とはまた違った面白さが見えてくるかもしれません。
今回は、富士スピードウェイの入口とも言えるホームストレートを紹介しました。
1,475mという長い直線。
しかし、その中にはたくさんの駆け引きが詰まっています。
そして、この長いストレートを走り切った先には、富士スピードウェイ最大の勝負どころのひとつが待っています。
1コーナーです。
ホームストレートでどれだけ速度を乗せるか。
どこでブレーキを踏むか。
どこから1コーナーへマシンを向けるか。
そして、ライバルとどう並ぶのか。
次回は、富士スピードウェイの最初の大きな勝負どころ。
「1コーナー」を掘り下げます。
長いホームストレートを全開で駆け抜けた先に待っている、富士スピードウェイ最大級のブレーキングポイント。
高速域から一気にマシンを止め、コーナーへ飛び込む。
オーバーテイクも、バトルも、ここから始まります。
「どこまでブレーキを遅らせられるのか?」
そして、カップカーでは何を意識するのか。
次回は、富士スピードウェイ「1コーナー」をレーシングドライバーの視点から詳しく紹介します。
乞うご期待ください。
富士スピードウェイ
「1コーナー」
長いホームストレートの先に待つ、
最初の大勝負。